「矯正治療は何歳までできますか?」とよく質問をお受けします。
矯正治療に年齢制限はありません。
ただし、
- 歯周病に罹患していない健康な歯ぐきであること
- 歯がしっかりとしていること
- 毎日しっかり歯みがきができること
- 歯並びをきれいにしたいと本気で思うこと
以上が条件となります。
逆に、いくら年齢が若くてもそれらが備わっていなければ矯正治療を行うことはできません。
私自身、これまで矯正治療を担当してきて思うことは、一度気になった歯並びはいつまで経っても気になってしまうということ、そして、「あの時やっていれば・・・」と多くの方からそのような声を聞きました。
矯正治療に手遅れということはありません。少しでも気になることがありましたらご相談ください。
抜歯・非抜歯について
『矯正治療』と聞くと『抜歯(歯を抜いての治療)』と連想される方も少なくないと思います。
そして、抜歯に抵抗感を抱かれる方も多いかと思います。
また、「できるだけ歯を抜かない」治療というのを目にしたり耳にしたりしますが、それは当たり前のことであって、大切なことは「なぜ抜歯が必要なのか?」「なぜ歯を抜かなくとも治療ができるのか?」というその理由です。
検査のうえで抜歯が必要ないと判断した場合は歯を抜かないのは当然のことです。ただし、日本人においては抜歯を伴う矯正治療となる確率は高いものと考えざるをえません。
抜歯となる場合が多いのはなぜ?
では、なぜ抜歯となるケースが多いのでしょうか?
まず考えなければならないことは、どうしてその歯並びになったのかということです。
叢生(凸凹の歯並び)を例に挙げると、「顎(あご)が小さくなってきているから歯が並びきらない・・・」なんてことを耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、実際にはそれを証明したものはなく、むしろ、顎の大きさは変わらない、顎は大きくなっている、と結論づけた論文はあります。確かに、近年では物を噛む回数が減りました。それによって歯列の幅(左右の歯と歯の間隔)が狭くなったのは事実です。ただし、顎の骨自体が小さくなってしまったわけではありません。
特に日本人はもともと骨格が大きいわけではありません。
それに加えて栄養価の点(妊娠されたお母さん)で歯が大きくなっているのです。
土台となっている顎の大きさが変わらず、その上に並ぶ歯が大きければ当然きれいに並びきることは難しいでしょう。
治療というのは、本来、元の状態に戻す行為(ちなみに矯正治療は新しい形を創るので“創造の医療”と言われています)ですから、何かの原因で顎が小さくなり歯が並びきらないのであれば、歯を抜かずに顎を大きくして(本来の大きさに戻す)歯を並べることはできるかもしれません。
しかしながら、顎の大きさは遺伝子レベルで決定されているため人為的に顎の大きさをコントロールすることはできません(上あごはわずかに大きくすることが可能ですが、下あごは広がりません)。そのため、土台である顎骨(歯が並ぶ顎の骨)に合わせた歯のサイズや本数で調整することが望ましいと考えられます。
また、歯を並べることだけでなく、口もと(横顔)の状態や治療後の歯列の安定性(後戻り)についてもここでは考えなければなりません。
口もとの状態は、前歯の位置によって決定されます。そのため、前歯を後ろに下げるかどうかで抜歯か非抜歯かが決定されます。
歯が並ぶ周囲には舌や口腔周囲筋といった軟組織があります。内側からは舌、外側からは口の周りの筋肉が作用しており、その中間に顎骨があって歯が並んでいます。
そのため、顎骨から外れて歯が並ぶと、当然バランスが崩れ矯正器具を外したあとに軟組織の力によって歯並びが大きく変化してしまいます。
つまりは、顎骨の中心に歯を並べることが長期的な歯列・咬合の安定に繋がると考えられます。
注)矯正治療後、歯並びは整いますが長期経過後には歯列に変化が生じることがあります。
これは、生体の生理的変化によるものであり、矯正治療の有無に関係なく起こることが報告されています。